鳥飼久美子・鈴木希明・綾部保志・榎本剛士(編著)『よくわかる英語教育学』ミネルヴァ書房
ゼミで読んでいる本です。ここまで英語教育に関連するトピックを網羅的に扱っている本は他にないと思います。英語帝国主義,国語教育との連携,機械翻訳などを取り上げているところが素晴らしい。見開き2ページで完結しているため,1つ1つのテーマはあっさりした記述ではありますが,参考文献リストに加えて,おすすめ文献の紹介があるので,興味のあるテーマに関してスムーズに理解を深めていくことが可能です。
Richard Cauldwell (2018) A Syllabus for Listening: Decoding. Speech in Action.
タイトルから分かるようにリスニング指導の本です。本書では,発話のスタイルを ①Greenhouse:一語一語クリアな発話,②Garden:音声学に則った音変化のある発話,③Jungle:ルール無視の発話,の3つに分類します(温室からジャングルの比喩が分かりやすいですね)。またスピーチのモデルとしてCareful Speech Model (CSM)を,リスニングのモデルとしてSpontaneous Speech Model (SSM)を設定し,スピーキングや発音の練習にはCSMの教材を,リスニング用の教材としてはJungleを含んだSSMを採用することを提案します。私は普段の英語学習でCNN English Expressを使っているのですが,実際のアンカーの発話が聞き取れないことがよくあります。しかし付録で収録されているナレーターだと同じ速度はもちろん,1.5倍速であってもクリアに聞き取れます。これがまさにGardenとJungleの違いだと思います。また指導という面ではトップダウン的なものに重点が置かれがちですが(特に教育に熱心な教師の場合),サブタイトルにもあるようにdecoding(ボトムアップ)の重要性を説いています。実践的な指導に関する記述が多く,音声は出版社のホームページから聴けるので,とてもタメになります。と同時に研究に関するヒントがたくさんあって,刺激を受けることが多いです。<2021.3.10>
三浦省五(監修)前田啓朗・山森光陽(編著)磯田貴道・廣森友人(著)(2004)
『英語教師のための教育データ分析入門:授業が変わるテスト・評価・研究』大修館書店
英語教育関係の第二言語習得論の論文を読んだり,自身で研究しようとするとぶつかる高い壁が統計です。以下で竹原(2013)を紹介していますが,ある程度統計の知識がある人向けです。まず最初の1冊としておすすめしたいのが本書です。高度な手法も扱っていますが,英語教育の実践例を元に解説してあるのでイメージがしやすいです。しっかりと勘所が押さえられてありますので,本書を読んだ後と前では大きく研究・統計に対する構えが変わってくるものと思います。しかし,第13章の二元配置分散分析の交互作用が出た場合の解釈(pp. 127-129)については,以前ご紹介した竹原卓真(2013)や平井明代編著(2017)等で確認する必要がありますので注意してください。
磯田貴道(2010)『教科書の文章を活用する英語指導:授業を活性化する技108』成美堂
授業がマンネリ化していて,ワンポイントのアクセントが欲しいというときに頼りになる1冊です。面白くてタメになり知的好奇心を刺激する,まさに授業を活性化する活動がたくさん紹介されています。
斎藤栄二(1996)『英文和訳から直読直解への指導』研究社
大学を卒業して高校の英語教員になった当初は,典型的な文法訳読式の授業をしていました。当時は体力にまかせて,無理やり力で抑え込むというスタイルをとっていましたので,授業は成立しているように見えていたと思います。しかし生徒たちが私のつまらない授業を我慢しながら受けていることは内心ではよく分かっていました。このよどんだ空気を変えるには?生徒が夢中になって取り組むリーディングの指導とは?という質問に答え(となるヒント)を与えてくれた1冊です。20年以上前の本ですが,今でも読み返して,自身の英語の授業や英語科教育法の講義の参考にしています。
田中武夫・田中知聡 (2009) 『英語教師のための発問テクニック:英語授業を活性化するリーディング指導』
大修館書店
読解活動では良い発問を出すことができれば,テキストを10回読みなさいというような指示を出さなくても,生徒は自ら何度でもテキストを読みます。また自分の探し当てた答えが合ってるかを知りたくて,他の生徒の答えやその理由も真剣に聞くようになります。このような理想的な環境を作り出すための良い発問の作り方のヒントが書かれています。
竹原卓真 (2013) 『増補改訂 SPSSのススメ1:2要因の分散分析をすべてカバー』 北大路書房
対応なしなし,ありあり,ありなしの分散分析に加えて,ノンパラメトリックの分析も扱っているので,英語教育で必要とされる分析はほぼカバーされていると思います。頼りになる一冊です。
靜哲人 (2002) 『英語テスト作成の達人マニュアル』 大修館書店
テストの作り方だけではなくて,授業中の効果的な活動を考えるヒントが書かれています。