田尻悟朗(2021)『知ってる英語で何でも話せる!発想転換トレーニング』コスモピア
英語教育界の重鎮,田尻先生の英語学習本です。スピーキングやライティングでは,日本語を英語に変換することになります。しかし日本語と英語は一対一で対応していないために,頭に浮かんだ日本語をそのまま英語にすると意味が通じなくなってしまいます。そのため,一旦,英語に直しやすい日本語に変えなければなりません。「おまえ本当に要領が悪いな」(p. 132)を英語で言いたいのであれば,「おまえは時間を取る/どんなことをするためにも」や「おまえは無駄にしている/たくさんの時間を/どんなことをするにおいても」(p. 137)のように「和文和訳」してから英語にすると上手くいきます。常に英語だけがパッと出てくる状態になっていれば問題ないのでしょうが,どうしても「こなれた」日本語が先に浮かんでしまうことがあります。本書では,そのような時にどのように頭を働かせれば通じる英語になるのかをたっぷりトレーニングできます。
内田洋子&杉本淳子(2020)『英語教師のための音声指導Q&A』研究社
正直なところ発音系の本は信用できないものがとても多いです。博士号を取得しているわけでもないのに「ドクター」を名乗っていたり,名前にカタカナ?が入っていることでネイティブ気取りで,とりわけ小学校英語教育に詳しい風だったりと,怪しい人がたくさんいます。そういった中で,信頼できる音声本は最初の数ページで挫折してしまうような敷居の高いものになってしまうのですが,本書は語り口がソフトで大変分かりやすく,それでいて,日本人英語学習者が知っておくべきポイントをしっかりおさえています。また実際の音声を用いて解説しているので,リスニングや発音を効果的に練習できます。「英語教師のための」とタイトルがついていますが,教師だけでなく,英語の発音に興味のある学習者全般に有益な一冊です。
遠田和子(2018)『究極の英語ライティング』研究社
簡潔で明快な英文を書きたいものですが,それが具体的にどういう特徴を持った英文なのかはイメージしにくいと思います。本書では,お題の日本語とダメな英訳が紹介され(いかにも作ってしまいがちな例ばかりで,図星を指されて動揺します),その後にお手本となる英文が提示されます。英文の良し悪しの理由が端的に書いてあるので,納得しながら読み進めることができます。語数をできるだけ減らし,言いたいことが伝わる単語を懸命に探すという作業は,面倒ではありますが楽しいですし,英語の力をつけてくれると思います。
HMアーカイブ編集部(2012)『英語でドラマを楽しもう!』
英語のドラマは何度か紹介していますが,どれも日本人英語学習者向けに作られたものでした。本書はカナダで放送されたコミカルなラジオドラマを編集したものなので,元はいわゆるネイティブ向けになります。聞き取りのポイントや親切な解説が付いているので,それらを手掛かりにすれば内容を理解することは難しくありません。しかし英語学習者向けの教材には絶対に出てこない独特の発音をする登場人物がいて,かなり手ごわいです。1990年代に放送されたものらしいのですが,古い感じもしませんし,登場人物が4人しかいないので,複雑な人間関係を理解するのに苦労するということもないので,すんなり話が頭に入ってきますし,それぞれのエピソードが面白いです。
アルク(2013)『生英語で聞く外国人の本音クロストーク』
本書ではアメリカやイギリスの他,ドイツ,イタリア,スリランカなど合わせて10か国のスピーカーが登場し,「時間の使い方」や「マイホーム事情」,「子供の名づけ」,「EUの未来」など,20個のトピックについて,3分程度話をしています。それぞれの話に登場するスピーカーは3人です。台本はあるのかもしれませんが,友達同士というわけではなさそうで,お互いに気を使いながら慎重に話を進めていくところが,スピーキングの勉強になります。もちろん様々な国のアクセントを聞けるので,リスニングの勉強にもなります。
濱崎潤之助(2018)『TOEIC(R)L&Rテスト 本番そのまま プラチナボキャブラリー』ジャパンタイムズ
TOEIC対策本は数えきれないほど出版されていてどれを選んだら良いのか迷いますが,この本は本当に役に立ちます。TOEICの形式ごとに重要単語が例文で示されているのですが,単語も例文もそれぞれの形式で頻出するいかにもTOEIC的なものばかりで,その選定のセンスに感動します。筆者は毎回TOEICを受験されているらしいのですが,その経験によってTOEICの傾向(クセ)をしっかり掴んでいるのだと思います。また全ての例文・文章に音声がついている点も大変有難いです。痒いところに手が届く単語集です。
アルク(2007)『AFN最強の生英語リスニング―スポット・アナウンスメント』
アメリカのラジオ放送(American Forces Network: AFN)で流された実際のお知らせ(広告)を80本集めた音源集です。どれもリスナーの印象にしっかりと残るように,表現にも効果音にも工夫がされています。また音源は短いもので30秒,長くても60秒程度なので,集中して聴くことができす。私は数回聴いた後にディクテーション(書き起こし)を行い,仕上げとしてシャドウイングをしています。前作の『AFN スポット・アナウンスメント』(1998)も面白かったのですが,絶版になってしまいました。こちらも出版されてから大分時間が経過していますのでご注意ください。新しい音源集を出していただきたいです。
*ディクテーションをマウス操作で行うのは大変です。代わりに書き起こしソフトを用いて,再生や一時停止,巻き戻しなどをキーボードの任意のキーに割り付けると効率的に書き取り作業ができます。有名な書き起こしソフト『Okoshiyasu2』を長年愛用していましたが,パソコンをWindows 10にしたのを契機に『テープ起こしプレーヤー』(アスカ21)に変更しました。こちらもフリーです。動作が軽く,様々な作業においてカスタマイズが可能なので,大変使いやすいです。
森田勝之 (2010) 『CD付 海外ドラマが聴きとれる!ストーリーで学ぶ英語リスニング』DHC
筆者が書きおろした医療系の英語ドラマです。ストーリーが面白く,登場人物も魅力的で,効果音も迫力があるので,何度聞いても飽きません。全部で16の場面から構成されており,場面ごとに音のポイント(同化や脱落,子音連結,機能語の弱形等)がまとめられています。同じ筆者による刑事ドラマ『New York Detective Story』も素晴らしい仕上がりです。どちらも楽しみながら,英語の音変化を学習できます。刑事ものと医療ものと分かれますので,好きな方を選ぶとよいと思います。
ナディア・マケックニー (2017) 『ドラマ仕立て イギリス英語のリスニング 楽しく学ぶ!
ロンドン暮らし12か月のストーリー』 研究社
上記で紹介したドラマはアメリカが舞台ですが,こちらはイギリスです。イギリス英語独特の表現や国民性を表す?ような話の展開が勉強になります。このドラマを聴いて,知り合いのイギリス人のことが少し理解できるようになりました。重要表現の丁寧な解説に加えて,イギリスの習慣や文化についても詳しく記述されていて,筆者の熱意が伝わってきます。続編の出版を希望します。
中山裕木子 (2016) 『会話もメールも英語は3語で伝わります』 ダイヤモンド社
日本語で考えたことを英語にするためには,いったんエッセンスを取り出してそれを英語の型に入れなければなりません。このプロセスが分かりやすく解説されているので,スピーキングやライティング練習の第一歩として役に立ちます。